違国日記漫画版最終回ネタバレ・感想

人見知りな小説家と姉の遺児がおくる年の差同居譚

2024年6月7日から全国公開となった同名映画「違国日記」の原作漫画。
作者はヤマシタトモコさん。祥伝社のFEEL YOUNGで2017年7月号より連載開始され、2023年7月号で完結。同年8月8日に単行本の最終巻である11巻が発売された。単行本の累計販売数は170万部を突破している。

両親を交通事故で亡くした15歳の田汲朝と、人見知りで他人との関わりが苦手な小説家高代槙生(まきお)の同居生活の話。

最初、槙生って男性かと思ったのよね。流して見てしまっていて、化粧が、とか、今日は美人、とか描かれていて、ん?ってなった、
しかも、姉が苦手という件で、その子供を引き取り、お姉さんに対する気持ちが変化していくハートフルなお話なんだと早とちりしておりました。

すみません。では。

違国日記の漫画読み始めた感想•ネタバレ

タイトルに惹かれ読み始めた漫画です。

他人との関わりや大人が抱える悩み、また10代の繊細な心情、複雑な家庭環境など、ともすれば重く込み入った内容になりそうなのにとても透明感のあり、心に残る漫画だなと。
「心が救われる」との評価も頷ける、
現実はこんなにきれいではないけれど、自分もこうありたいと思った、

大人である自分は、大人側の槙生(まきお)、ともすれば槙生(まきお)のお母さんくらいの視点で読んでいたのだけれど、ふと、朝の言動を見ていて己の15歳頃ってどうだったっけと、記憶を掘り起こしてしまった。掘り起こしたりするんじゃなかった。
遠い自分の思春期の、黒歴になるような、何とも言えない、刹那的な感情があった事を思い出してしまった。黒歴史すぎてとてもイタかった。

閑話休題

朝と槙生(まきお)は、姪と叔母の関係であるが、朝の両親の葬式がほぼ初対面である。
葬式の席で、親戚たちは朝の生い立ちや今後の事で心ない言葉を発する。
朝を誰も引き取ろうとしない状況に苛立った槙生が、勢いで朝を引き取ることになり、同居が始まる。

人との関わりが苦手だからこそ、不器用であるが人に真摯であろうとする大人の槙生と、とても人懐っこく素直な子供である、中学生の朝は対照的。

朝は、素直って言えばそうなんだけど、年齢の割に幼いなと感じたが、15歳ってそんなもんかな?今時なんかな?もう大人をやって、長いので忘れたわ。(これが黒歴史を思い出すきっかけとなったのだ)

槙生は、朝の母であり自分の姉である実里(みのり)の事を嫌っていた。姉に言われ続けた言葉が呪縛のように槙生を縛り付けていたからだ。
「あなたは人違う。人と違う事をしてはいけない。」

その子供を引き取る。「普通」なら、嫌いな姉の子供とい事で、辛く当たってしまいそうであるが、実里(みのり)と朝は別の人間と切り分け、朝を両親を亡くした15歳の子供として扱い、自分が影響を与えていいものか考えあぐねながら、共同生活を送っている。

槙生は、人は人、自分は自分という考えが強い。生きていく中で、普通でない、人と違うため自分を確立するように、より強くそう考える。

朝は、最初は両親の死をすぐには受け入れる事ができず、叔母を変わった人だと思いながらも生活を共にし、日々を過ごしていくうちに妙烈な寂しさに気付き、両親の死を受け入れる事となる。

最後は、朝の高校卒業と姿は描かれていないが大学卒業して数年後の、恐らく朝とえみりの会話で締めくくられている。

違国日記漫画の最終巻の11巻を読み終えた感想・ネタバレ

この作品のテーマは共同生活であるが、朝と槙生のふたりの関係だけでなく、彼女らを取り巻く人々の関わり合いも見どころの一つであった。

まきおは姉が苦手でその子供である朝にどう対応していいのか悩むが、常に朝を個の人間として扱い、意思を尊重しするも、自分の感情を下手に隠したりはしなかった。
対して、朝は槙生の事を大人か子供かわからないへんな人と思いながらも同居生活は始まるが、今まで大人(母親)が先決めてくれ安心できる生活を送ってきた朝は、自分で決断することに戸惑う。

お互い葛藤しながら、影響しあい、変化していくのだ。
下手をすれば、2人だけの閉ざされた話になりそうであるが、2人の周りには支えてくれる人がいる。基本みんな人間の質がいい。性格は知らんけど。
皆、誰にでもあるような問題をそれぞれ抱えている。

槙生の友人達。人付き合いが苦手な槙生を心配して、朝との共同生活の様子を見にきて世話をしてくれるダイゴ。父親との葛藤が最後に描かれていた。

つかず離れずの元カレの笠町くん。悩んでいるときに頼りになり、甘やかしてくれる、過干渉でない、こんな都合のいい元カレいいな。けど、実際はいねーよこんな人。
って思ったけど、好きな人に嫌われてくなくて、側にいたいとなると、狡さも含んでそうなるかもしれない。
お互い都合の良い関係ではあるけど、お互いを尊重しているならそれでいい。
彼もまた父親に対する複雑な心境を語っていた。

他人との共感が薄く空気を止まない発言が多い弁護士の投野さん。朝とまきおの未成年後見監督人であり、朝とまきおのどちらにも公平に対応する。
塔野さんの存在が笠町くんの刺激となり、父親の愛情に不信感をもっていた朝の気づきのキッカケにもなる。

朝の友人であるえみり。両親を亡くした朝に絶対的な肯定者になろうと頑張る、心優しく精神的に大人な同級生。彼女は同性愛者である。朝に同性愛者であることをカミングアウトできずに悩み、朝の無邪気な言葉に傷つきながらも、自分の気持ちに素直に行動をする強さがある。

槙生の作家仲間に性同一性障害のジュノさん。朝に、なりたい自分になる発言をさせた人物。

こう見ると、単なる共同生活の問題だけでなく、若い世代の社会問題を盛り込んだ話だった。介護問題は流石になかったので、若い世代。

家族の在り方、発達障害、LGBTQ、子供を支配する親、男らしさ、女だから、などなど本当にもりだくさん。なので、どうしても伏線未回収の感じも否めないが、それらはすっきり解決するような事ではなくどう折り合いをつけるかであり、話としては落ち着くところに落ち着いたところか。
現実の複雑さ不完全さを捉えて表現しているからこそ、説得力や共感があるのだろう。

人は皆違う。「違う国」の人間同士が、「違う国」の人間と関わり合い助け合いながら生きていく。
そうやって成長していくのである。

違国日記漫画の中のまきおの名言

違国物語の漫画は、名言が多いと思う。
ありすぎるので、心に残ったセリフを名言としてあげてみることにする。

まきおは、違国物語の漫画の中では明言されていないが、発達障害という設定らしい。人が苦手、片付けられない、嘘がつけないなどなどで表現している。
まぁ、学校はサボりつつも一応通えて友人もいるわけで、いわゆるグレーゾーンというところですな。
そんな槙生は、小説家という自分の感情を刺すような言葉にする事を生業にしており、心に刺さる言葉が多い。

朝の両親のお葬式で、勢いで発した槙生の言葉

あなたは 15歳の子供は
こんな醜悪な場に ふさわしくない
少なくともわたしは それを知っている
もっと美しいものを 受けるに値する

そういって、朝を引き取った。もっと美しいものを受けるに値する。
本当にそうだ。多感な15歳は世界の美しいものをたくさん見てほしい。大人の願い。

わたしは大体は不機嫌だし
あなたを愛せるかどうかはわからない
でも
私は決して あなたを踏みにじらない

愛せないからといって相手の人権を蔑ろにすることはおかしい。子供であれど、個として尊重するまきおの考えがわかる言葉。
子供は大人の従属物ではない。自分たちも子供だった時があるのに、なぜ人はそれを忘れるのだろうか。

両親が死んだけれど悲しまない朝に

悲しくなるときがきたらその時悲しめばいい・・・

と言い、

でもあなたの感じ方は
あなただけのもので誰にも
責める権利はない

とも言う。15歳の子供が両親の死を受け止めるのに時間がかかることを理解し、人に言われて感じるものでも無いと教える思慮深さが感じられる。
鈍感な大人は恐らく泣かない彼女を冷たいと言うだろうし、それどころか悲しむより先に子供の身の振り方を問題にするだろうとわかっていたからこその言葉。

人と常にいることが苦手な槙生が仕事に集中するあまり朝をぞんざいに扱ってしまう。朝は両親の死後、両親の愛に疑いを持ち始め強烈にさみしさを感じるようになっていたため、朝は槙生の行動に傷つきさみしさを訴える。

 …朝
あなたが私の息苦しさを理解しないのと同じようにわたしも
あなたのさみしさは理解できない
それは
あなたとわたしが別の人間だから
・・・ないがしろにされたと感じたなら悪かった
だから・・・歩み寄ろう

それでも朝は考える。寂しくないのかと。そして問う。

誰のために何をしたって人の心も行動も決して
動かせるものではないと思っておくといい
ほとんどの行動は実を結ばない
まして感謝も見返りもない
そうわかっていて
なおすることが尊いんだとも思うよ

まきおは皮肉交じりの苦痛の顔で言う。おそらく小説家であることの思いなのだろう。

違国物語漫画の中の朝の名言

物語は朝の両親が交通事故に遭い槙生に引き取られてから高校を卒業するまでのお話。
朝のモノローグから始まり、同じモノローグで終わっていた。

あの日 あのひとは
群れをはぐれた狼のような目で
わたしの 天涯孤独の運命を 退けた

この物語の全てが表現されている。
群れをはぐれた狼。狼は孤高なようで、基本集団で群れで生活する。
群れから逸れた狼は寂しいのであろうか、何も感じないのであろうか。

朝がジュノさんに言い放つ言葉

なりたい自分になりたいのっ!!

いやー。若いわ。

おかあさん
あなたという帆がない
おとうさん
あなたが灯台にいてくれたのかどうか私にはわからない
わたしの船は もろく 小さく
ぽつん ぽつーーーーんと
砂漠に乗り上げ
寂しく途方に暮れている
おかあさん
おとうさん
帆も灯台もなく
私の船はいったいどこへ行けるだろう
わたしは
わたしたちは
いったい何になれるだろう
いったいどこへ行けるだろうか

思春期のアイデンティティの確立が始まるときに、良くも悪くも指標となる両親をいきなり亡くす。親が親という役割だけでなく、人間であることに気づき反発し受け入れていく時期であり、その対象がいきなりいなくなるため、自分の存在自体に確信が持てず、戸惑いが表わされていて切なくなる。

まきおのつたないが大きな愛情を知って、満たされたであろうか。朝は素直に愛情を受け取れる子なのでだいじょうだろう。

違国物語漫画がTVアニメ化決定!

ちがう国の女王の 王座の片隅で眠る

違国日記の漫画がTVアニメ化されます。
放送日やCVは未定。

監督は大城美幸さん。
厚生・脚本は、喜安浩平さん。
キャラクターデザインは、羽山賢二さん。
音楽は、牛尾憲輔さん。
アニメーション制作は「夏目友人帳」などを手掛ける朱夏。

先日、TVアニメ化の決定と合わせて。ティザービジュアルとティザーPVが公開となりました。
ティザーヴィジュアルでは「ちがう国の女王の王座のかたすみで眠る」という違国日記の漫画1話での印象的なシーン。
二人の共同生活の象徴ともいえる、パソコンの明かりのみの暗い部屋の中で、執筆に没頭するまきおと、布団に入りながらその横顔にスマホのカメラを向ける朝とのツーショット。

また、アニメ化に先駆けて実写映画化が行われ、監督に瀬田夏樹さん、主演に新垣唯さんと早瀬憩さんを迎え、2024年6月7日より全国で絶賛上映中です。

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